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伝統 2012-02-19

Column


伝統を大事にするとか、伝統にアグラをかくとか耳にしたことはありませんか?
 漆は非常に長い歴史があり”伝統”があります。
 近年では漆器産地ごとに”伝統”が形成され、なんとなくのイメージになっているのではないでしょうか。

 会津でも”伝統”というワードはよく耳にします。 この仕事に就いた頃から、伝統は大事にしろとか守れとか聞かされてきました。
 しかし、「伝統ってなに?」と思っても明確な答えは一度も聞けませんでした。

 基本は職人ですから、工程や道具も長い時間の間に工夫されてきたと思いますし、実際云われた通りにやれば出来ます。でも何かがシックリこないんです。

 例えば、漆を塗るのに会津ではガソリンやシンナーをガポガポ入れます。ペンキのように…
ペンキがダメとかではなく、食器でしかも天然塗料のイメージの漆に溶剤ガポガポが抵抗あるんです。

 では何故入れるか?漆屋さんに注文するといろいろ塗りやすく”調合”するため固めの漆が送られて来て、またまた塗りやすくするために溶剤…。
 自分では、そのような椀に熱い汁を入れて戴くのに抵抗があり、何度か溶剤の害は無いのか聞いてみました。

 大体は、溶剤はすぐ揮発して何も残らないから大丈夫!みたいな答えでした。でも、ガラスの上にガソリンを垂らして直ぐに揮発しても跡が残ります。これを舐めてみろといわれたらやっぱり抵抗があり嫌ですね。

 ここで考えてみてください。ガソリンはいつ頃から出現したのか?けっこう近代ですよね。伝統技法って案外その時々で、都合よく変わってきていると分かります。言葉と似ていますね。
 でも、それも含めて伝統になっているんです。大事なのは、その時々で考えより良くすることを積み重ねて伝統にしていくことだと思います。

 昔は溶剤なしでどうしていたのか?答えは簡単、なにも混ぜないで精製した漆は、非常に塗りやすく延びがイイからそれだけで塗りやすいんです。塗上がりも艶とハリが他の塗料では出せない漆独特の肌。そして一度固まれば、鉛筆で9H相当の硬度の塗膜。なにより使い込んだ時の艶が上がっていく”育つ”楽しみまで付いてきます。

 伝統は僕にとってはデータの意味合いが強いです。こうした工程を組み合わせればこういう効果が出せるとか、どれくらいの強度が期待できるとか、こんな表現はこうすれば近づくはずとか…。
 この椀は、普通に使って10年は大丈夫なんてホントに10年かからないと分からないのも困りますし。

 だから”伝統”はとても大切。

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下地 2012-02-19

Column

 漆の、他の工芸と違うところは塗料であり接着剤、素材というところではないでしょか。
 いろいろな表現がしやすいのですが、中でも一番漆らしいといえば黒や朱の”塗り”ですね。

 木を刳りぬいた”木地”をベースに塗っていくのですが、白木にいきなり黒や朱を塗るんじゃなく、下地工程を施した上に塗るのが一般的です。
 下地にはいろいろな種類があって、その器の用途やベースの樹の種類、価格によって組み合わせを変えていきます。

 最近どこでもあるのが、精製漆を何度も塗っては研ぎを繰り返す所謂”ぶっつけ塗り”(この名称は正確ではありませんが、感覚で分かりやすいので使います)。

 丈夫だとこの技法を使う方が多くなってきました。仕事はある意味簡単で、漆を刷毛で塗るだけなので素人でもなんとか出来ます。近代漆芸界の代表的な方も丈夫だと著書に書かれています。

 しかし問題もあります。漆はいくら平均に塗っても、固まるまでに厚みが変わります。角や張っている部分からヘコんだ部分へと流れます。よく朱塗りで角や口周りが黒く透けているのはこの為です。問題とはこの性質から漆の厚いところと薄いところの差が大きくなってしまうことです。

 塗る回数が多くなれば当然カタチも変わるし、漆が厚く付いてほしい所は薄いまま。だから”ぶっつけ塗り”はラフな仕上がりの漆器に多く見られます。

 もう一つ、伝統的な技法に”サビ”という砥の粉、地の粉(珪藻土を焼いて粉末にした粉)、漆を混ぜあわせたペースト状の下地剤を均一に付けていくものがあります。
 こちらは刷毛で塗ったりヘラで付けたりしますが、特に滑らかで均一に仕上がるヘラ付は、ヘラを削るだけでもかなりの修行が必要な技術です。

 この”サビ”は、ぶつけると壊れやすいこともあります。しかしあくまでぶつけるとの話…。
 本来、漆器の丈夫さは耐衝撃性ではなく耐久性を重視します。ぶつけて壊れるというのは、土台である木地まで壊さない効果もあります。実際、研ぎの工程で轆轤から外れてしまうと、ぶっつけ塗りは木地まで壊れるのを多く経験しています。
 ”サビ”で壊れるとそこまでの補修で、また塗り直せるのです。

 もう一つ、”サビ”には目的があります。均一に付けることが出来るので、繊細なラインが作れます。角をつくるとか平面をつくったり、蓋の閉まる空気の抜けのような微妙さも調整できます。
 最終的なフォルムや五感で感じる印象を決定します。

 これは、どちらが丈夫とか優れているというのではありません。その効果を狙って選べば良いのです。ただ、最近はどちらかしか出来ないでブッツケが丈夫ということも耳にします。それが、今後の後継する世代に大事な技術が受け継がれなくなる原因になっては絶対にいけません。




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